小島基成の全てのチューニングをポジティブに

小島基成のブログ。

カムロ

「カムロ」


小島基成



ぼくが
「ぼくが禿げたとしてもぼくのことを好きでいてくれるかい?」
きみは
「当然よ」
って言う。
それから少し考えた後に
「いつごろ禿げるのかしら?」
ぼくは父がいくつで禿げだしたのかを考えてみる。
しかし記憶はおぼろげで確かなことは何一つとして思い出せない。
こんなことなら
「こんなことなら親父が死ぬ前に何歳で禿げたかを聞いておくんだったよ」
きみはウフフと笑う。
なんだか大福餅みたいだなと思う。
思っただけ。
何もしない。

ぼく。
「それにしても随分と不公平な話じゃないか。男ばかりが禿げ続けるというのは」
きみ。
「あら、そうは言うけれど、あなた方はその代わりに生理痛という苦しみがないじゃありませんか」
ぼく。
「きみたちはその代わりに射精した後の言いようのないむなしさを胸に抱えることはないじゃあないか」
きみ。
「あらあら」
ぼく。
「あらあら」

それにしても不公平だと思う。
世の中には禿げやすい性別と禿げにくい性別とがあって
さらにその禿げやすい性別の中にも禿げやすい遺伝子と禿げにくい遺伝子とがあって。
いやはやと思う。
「いやはや、外人はいいよな。禿げても随分とかっこいいし」
きみ。
「あら、それはお門違いだわ。外国の方が禿げてもかっこいいのではなくて、かっこいい方が禿げてもかっこいいの。きっと随分とみすぼらしく禿げた外国の方もいなさることよ」
そういうときみはずるく舌をだして。
ぼくはますます溜息をつく。
「そんなの不公平じゃないか」
きみ。
「あらあら」
ぼく。
「不公平だ」
きみ。
「あらあら」
ぼく。
「あらあら」
ウフフと笑ってきみはぼくのカムロをじぃっと眺める。
「別に隠し立てするものでもありゃあしませんでしょうに」
確かにと
ぼくは思う。
けれどもと
ぼくは思う。

「禿の気持ちは禿にしかわからんのだよ」

口に出した言葉はいったそばから説得力を失って
なんだか無性にやるせない気持ちになる。
確かに
禿の気持ちは禿にしかわからない。
けれども

禿は自分の事を禿だと認めない故に禿なのだ。



(注,本作はあくまでフィクションです)
  1. 2011/11/21(月) 16:10:51|
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